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2006年4月25日 (火)

猫背の理由

 僕は猫背ではない。高校生まで剣道をやっていた僕は猫背とは無縁の人間だ。だがカミサンと歩くときは猫背になって地面ばかり見て歩く。なぜなら、顔を上げて歩くと道行く女性の中に夏子の姿を探し求めてしまうからだ。------- 
 数年前、夏子は僕の会社へ派遣社員としてやって来た。夏子は僕より4歳も年上の26歳だったが、新卒の僕よりも遥かに若く見え、おまけに飛びっきりの可愛い子ちゃんだった。夏子は一躍、社内のアイドルとなり、男たちはみんな夏子と付き合いたくてウズウズしてた。実は僕もそのクチだった。それがある日、エレベーターで乗り合わせた夏子と偶然にも二人きりになって、夏子の方からメールアドレスを教えてと微笑んできたのだ。僕は小躍りしたい気持ちを抑えながら、さも平然と答える素振りをした。その週末、僕は夏子とデートした。緊張しまくっている僕は、夏子と視線が合う度にドキドキしっ放しで、美術館でも小洒落たカフェレストランでも、夏子が見せる女の子らしい仕種の一つ一つに感動しながら、永遠に彼女と二人きりになれたら、とそんな思いで頭の中がいっぱいだった。まだ半日しか過ごしていないのに夏子が愛おしくてたまらない僕は、デートの帰りに夏子を部屋まで送って行き、お茶を飲むためだけに立ち寄った彼女の部屋で、結婚して欲しいと思い切ってプロポーズした。すると夏子は返事もしないで綺麗な笑顔を見せ、僕にキスした。そして、僕たちは一つになった。僕は目をつぶるのも惜しくて、僕のそばで寝息を立てている夏子を見つめ続け、夏子のためなら何んでも出来ると思いながら彼女の部屋で朝を迎えた。けれどその日を境に夏子は僕からの連絡を無視し、社内で会っても知らんぷりをし続けた。夏子の態度に僕は混乱し、愛おしさと悔しさの感情がぶつかり合いながら空回りしているさなか、彼女は派遣契約を終えて退社していった。しばらくしてから風の便りに夏子が未婚のまま男の子を出産したという噂が聞こえてきた。まさか、僕の子ではないだろう。そう思いながらも、僕は夏子に確かめる勇気がないまま月日を重ね、人から勧められるままに見合い結婚した。夏子、夏子、夏子・・・。僕は結婚して3年も経つのに、まだ夏子のことを忘れられずにいる。

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