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2006年10月 5日 (木)

再会

 青森から甥っ子が上京するというので東京駅へ出迎えに行った舞子は、駅構内で擦れ違う人、また人の波に息苦しさを覚えた。さすがに夏休みだ。予定の時刻より早く来過ぎたのを後悔する。舞子は仕方なく構内の柱へ寄り掛かると、携帯を握りしめてぼんやり東北新幹線の改札口を眺めていた。そこへ突然若い男から「こんにちは!」と声をかけられ、えっ?まさかナンパ!と嬉しさに心臓をドキリとさせ、軽く微笑みを作って視線を上げると、甥っ子の辰也が意味ありげに笑っている顔を見て、思わず唇をぎゅっと結んだ。
「おやー、舞子おばさん。ひょっとしてナンパされたかと思って期待したんだろ?」
「ふん」と言って舞子は視線をそらした。それにしても辰也は三年会わないうちに身長が10センチ近く伸び、ヒゲが生え始め、かつてのイタズラ小僧の面影すらない。
「隠さなくっていいよ、図星なんだろ。舞子おばさんってわかりやすい性格だからな」
と、笑う辰也の肩をコツンと小突くと、舞子は他人の振りをして一人歩き出した。
「怒るなよ、可愛くないな」
「別に怒ってなんかないわよ。毎回あんたを出迎えに来るのが面倒くさいだけ」
「そんなこと言っちゃって。本当は俺といると楽しいくせに」
「まさか、冗談でしょう。あんたと一緒にいる位なら家でゴロゴロしてる方が・・」
 舞子はそう言いかけて身体を強張らせた。前方から若い女と手を繋(つな)いで歩いてくる元彼の姿がある。よりによってこんな日に会うなんて、と顔を背けた舞子にいきなり辰也が腕を組んできた。「ちょっと!?」と驚く舞子に「いいから、彼女っぽくしなよ」と辰也が優しく微笑んだ。舞子が辰也と腕を組んだまま歩き出すと、すぐ近くまで来た元彼も舞子に気づいたようで、おや?とばかりに眉毛を持ち上げると、連れの辰也を見てギョッとした顔つきになり、舞子を一瞥するとそのまま通り過ぎて行った。
「やったね、舞子おばさん。大成功だろ?」
「子供のくせに変な気を回すんだから」
「よく言うよ。まあビッグマック2個でチャラってとこかな」と言う辰也の肩を「コイツ!」と軽く小突くと、舞子はふっと笑った。

tohyouneko.gif
久々に掌(たなごごろ)小説を書いてみました。面白いと思われましたら猫をクリックして是非投票して頂けますようお願い致します!

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コメント

もときちさん、今晩は(^_^)   凄い雨ですね~(>_<) また、小説が始まりましたね~O(^_^)Oワクワク

投稿: ヨシ | 2006年10月 6日 (金) 19時39分

>ヨシさん、今晩は! 

風雨ともにスゴイですね。うちの建物は公園に面しているせいで風が直撃して、窓が開けられない状態です(;>_<;)

半年振りに小説を書き始めて読んでもらえるのだろうか?と思っていたとこでしたので、ヨシさんのコメントに感激してます(*^-^*)

投稿: もときち | 2006年10月 7日 (土) 00時59分

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