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2008年7月11日 (金)

桜木クンのボタン

 桜木クンと初めて話をしたのは高校一年の時、体育祭のフォークダンス。手をつなごうとして、どういうわけか桜木クンの手を爪で引っ掻いちゃって「ごめんね」と言ったら、「おまえは猫かよ」って笑われた。桜木クンとは同じ学年のクラス違い、だから顔しか知らない間柄。次に話をしたのは駅ビルで買い物した時で、私が「こんにち」って言ったところで、桜木クンったらいきなり「なあ、腹減らないか、マック行くか」って。それから私たちは気が付けばいつも一緒に行動するようになっていて、そのうち、お互いがかけがえのない存在となっていった。あの頃は二人とも想いが最高潮熱くなっていたんだと思う。だから私が電話すると桜木クンは決まって「おまえのこと考えてた」って答えたし、桜木クンから電話があると「いま、桜木クンにメールするか電話するかどっちにしようかって考えてたとこ」と答えるのが普通なくらい、しょっちゅう電話をかけたりメールを送りあった。放課後、桜木クンに家まで送ってもらうのも慣習になっていて、送ってくれた桜木クンを玄関の前で見送るのも慣習だった。夜さえ来なければ、桜木クンと一緒にいられるのに、夜の馬鹿!死んじゃえ!!と、そんなことに本気で腹をたてたりした。桜木クンと付き合うまで、男の子のことをこんなに好きになるなんて信じられなかったし、考えたこともなかった。私たちは付き合ってからずっと腕を組むのが精一杯だったけど、そこから進展したのは高校二年の秋、京都へ修学旅行に行った時だった。自由行動で二人が訪ねたお寺の境内、人一人いない。竹林の木漏れ日、蝉の声、水苔の匂い。私の心臓の音だけがうるさい。桜木クンは、何故かつないでいた手を離して私の正面に立ち、まっすぐこちらを見つめた。桜木クンの視線の先にある私の唇。私は「いいよ」のつもりで目をつむった。顔がほてって真っ赤になっているのがわかる。何秒か、何十秒か、よくわからないうち、唇に柔らかい感触があった。それからまた流れていく秒数・・・唇が開放された瞬間、息苦しさのあまり、はあっと息を吸い込んだら、二人とも同時だったんで大笑いしたっけ。「卒業したらまた来ようね」って、指切りして約束したのに、高校三年の春、桜木クンはすぐには会えないくらい遠い所へ引越し、私たちの気持ちも距離と同じくらいどんどん遠くなっていった。卒業式の日、桜木クンから、制服の第2ボタンが送られてきた。「おまえにもらって欲しい」と一言だけ書かれた手紙と供に。あれから15年経ったけど、今でも、桜木クンのボタンは私の大事な宝物、たぶん、これからも、ずっと・・・

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