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2008年8月18日 (月)

園学(そのがく)のチャーリー

 チャーリーの隣りが空いている!バスに乗り込んだまどかは、吊り革に捕まって文庫本を読んでいる男子高校生の隣りの場所へいち早く移動した。彼はまどかが高校入学以来2ヶ月間、通学のバスで乗り合わせている園学高校の生徒で、いつも同じ時間のバスに乗ってくる。名前も学年もわからない彼のことを、まどかは密かに「チャーリー」と呼んでいた。チャーリーと過ごす朝の10分間は、同じ空間に一緒でいられる小さな幸せと、見つめるだけで何も出来ない切なさが重なり合って訪れる時間だった。いつか、チャーリーと隣り合わせになったら話しかけてみよう、そう思ってはいたものの、現実に隣り合わせになってみると、180センチはありそうな細身のチャーリーを見上げて、しかも読書を中断させるような口実など何もない。それでも、まどかは進行方向を見るフリをしながら、上目使いにちょこちょことチャーリーへ視線を走らせた。肩先へ届くサラサラの黒い髪、太く濃い眉毛、切れ長で黒目がちの瞳に通った鼻筋、そして笑顔が似合いそうな大きな口元、身体のパーツどれひとつ取っても申し分ないカッコ良さだ。彼女なんて高望みはしない、せめて友達でもいい、そんなまどかの思いをよそにバスは通学路をどんどん進んで行く。すでにアナウンスは次の停車場を案内し始めていた。その時、チャーリーの隣に立っていた会社員風の男が降車ボタンを押そうとして、チャーリーの身体にぶつかった。その拍子にチャーリーの本に挟まれていた栞が、木の葉が舞うようにヒラヒラとまどかの靴の上へ落ちてきた。ええっ、どうしよう!と心の中で呟きながら、まどかはすかさずしゃがみこんで栞へ手を延ばした。そこへ栞を拾おうとしたチャーリーの指先に触れ、「あっ、ごめんなさい」とまどかは思わず手を引っ込めた。「なんで謝るの、拾ってくれようとしたんだから、すみませんって言うのは僕の方じゃない?」「そう言われたら、そうかも」「そうだよ」と言って白い歯がこぼれたチャーリーと初めて視線を交わし、まどかの心臓は壊れそうなくらい早くなる。「じゃあ、また明日」と、チャーリーは園学高校前で降りて行った。頭の中で繰り返し再生されるチャーリーの声。走り出したバスの中、チャーリーの後ろ姿が見えなくなっても、まどかは窓の外をずっと見つめて、チャーリーに触れた指を握りしめていた。

学園モノがマイブームになっていて、前作に引き続き高校生の女の子が主人公の話を書いてみました。興味を持って読んで頂けましたら横の黄色いバナーをクリックしてくださいますようお願い致しますm(*_ _)m

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