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2010年12月31日 (金)

掌小説「微笑み返し」

私の居間。ソファーに座る彼。さっきから無言で二人ともテレビドラマを見ている。面白くもなく、でも他に見る番組もなく、なんとなくチャンネルを変えられずにいる。コマーシャルに切り替わり、彼がテーブルに置かれているコーヒーカップを取り上げた。心にポッと浮かぶ言葉。どうしようかと迷ったけど、今がチャンスかもしれない。なぜかそう思った。

「私のこと、好き?」と彼の横顔に訊いてみた。

返事なし。え? なに今の? ワザと聞こえないフリ? 一瞬、心に冷たい氷が張っていく感じがした。彼がコーヒーカップをテーブルに戻す。コマーシャルが終わってドラマがテレビ画面に戻ってくる。私の中にはコマーシャルのまま、ドラマが停止して、気まずい余韻が残っている。言わなきゃよかった、あんなこと。後悔しても始まらないのに自己嫌悪ブルーに染まっていく。

次のコマーシャルが流れる。彼が「あのさ」とぼそっと言う。そして次は無言、再び沈黙。仕方なく私の方から「なに?」と、さりげなく訊く。

「じゃ、温泉旅行でも行こうか」

「えっ?二人で行くの?」

「俺と行くのは嫌なの?」

彼の肩をパンと軽く叩いた。気にし過ぎて損した気分。心の中を見透かされないよう精一杯ながらも余裕を持って微笑みを返す。

「あなたが嫌いだったら、私のこと好き?なんて訊かないでしょ」

フッと笑った彼が人指し指で私のこめかみをツンと小突く。私は幸せな猫のように彼の身体にもたれかかる。

今年最後のブログ記事を掌小説で終わることができました。ありがとうございました。来年もまた書きますので応援のクリックをどうぞ宜しくお願いいたします。

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